空豆さん闘病記(その6)

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タクシーの中でもハアハア言い続ける空豆さん。けど、このままタクシーの中で呼吸が止まる感じはしない。理由はなく、これもただの願望だよな、と思う。けど、そう思わないといられない。(前回から続きます)

6時30分に病院に到着。すぐに診察室に運ばれて血液検査。7時ちょっと前に当直の先生(以前、血管の状況について説明してくださった方)に呼ばれて説明を受けます。

空豆さん、血液の成分が非常に低い(飼い主はいままで見たことないような)数値で、体温は40度超。輸血できない状況では、おそらくこのまま病院で亡くなると思います、と。

飼い主からは2つのこと。

わかります。きっとそうだと思います。けど、いま2頭のワンちゃんを連れて来てくれる人がいます。もしかしたらその後2-3頭来てくれます。血液型が合うかどうかはわからないけど、そこにチャレンジできないでしょうか。きょう1日保つだけでいいんです。

もしそれがダメだとしても、できるだけ苦しくない状態にしてあげたいんです。何か方法はないでしょうか。

当直の先生からは、そのワンちゃんたちに希望をつなぎましょうと。その準備を進めますと言っていただきました。

7時30分に大家さんご夫婦と2頭のワンちゃんが到着。その子たちの血液検査が進みます。ああ、みんな空豆さんのためにがんばってくれている。

8時過ぎくらいに、いつも空豆さんを診てくれている担当の先生も到着し、さらに状況を説明してくださいます。

危ない状況であることは間違いない。が、輸血が続けられれば、多少の時間稼ぎができて、その間に別の薬をできる限り試す、という対処もできます。

その言葉を聞きながら、でも、そんなに簡単なことじゃないんですよね、と思う。手に入る血液をフルに使い切った上で、2日でこの状態なんですもの。わからない中で手を尽くさなければいけないお医者さんって大変な職業ですよね。


血液検査の結果が出ました。

いま来てくれたワンちゃん2頭は両方とも血液型はプラス。空豆さんとは異なるので輸血はできないと。ただし、きょう1日保つかどうかのチャレンジとして、血液型に目をつぶって(細かくいうと、犬の血液型はいろいろなので、初回だけであれば、凝固反応が起こらないこともある)輸血してしまう手はある。

ではそのチャレンジを、とお願いし、凝固が起こらないかのチェックをしましょう、と再度の検査がはじまりました。

・・・と。

急に名前を呼ばれ、「空豆ちゃん心肺がもう・・・早く診察室へ来てください」

そこには診察台の上に横たわっている空豆さんがいました。

口元には酸素のホース。ちいさくシューっていう音。

手足には電極がつけられ、病院ドラマみたいな心電図の機械につながっていました。

担当の先生が、酸素のホースを支えていたスタッフの方に「それはもういいから」と伝え、私が近づくスペースを作ってくれます。

呼吸はすでに止まっていて、心臓だけが動いていました。

2、3回、脚がピクッと動きました。

心電図のピッ、ピッ、、、という音が、時々止まっては動き出します。

空豆さんに触れると、まだ体温があります。

・・・よくがんばったね、空豆さん、ずっといい子だったね。グッド、グッド。

首のあたりをなでてあげます。いつも「なでろ」と要求してくるところです。

・・・ほんとにいい子だったよ、えらいよ、ありがとう、空豆さん。

心臓の動く時間がだんだん短くなってきます。

もう見えていないであろう空豆さんの目を見つめて、なで続けます。

数分後、心音が止まりました。

担当の先生から、死亡の宣告を受けます。彼女の目に涙が浮かんでいるのを見て、こちらも涙があふれてきます。


しかし、診察室で感傷に浸っているわけにもいかず、輸血の作業は中止することを確認し、遺体をどう持って帰るかを決めます。

白いタオルと、棺としての白いダンボールをご用意いただけるとのことで、タオルでくるんだ状態の空豆さんを、ダンボール箱に入れて、タクシーで連れて帰ることに。遺体をキレイにして棺にいれるまでを病院の方がやってくださるとのこと。

診察台の空豆さんを残して、先生方に感謝を伝え、ICUの中にいるワンちゃん猫ちゃんに「みんながんばってね」と声をかけ、ああそうだ、ビーグルのスパイクさんとオラフさんにもよろしく、と会釈をして、待合室に戻ります。

待合室で待っていた大家さんご夫婦にはもう状況は伝わっていて、私からも「見送ってきました」の一言。

同じく待合室で待っていたワンちゃんたちが身体を擦り付けてきてくれます。

そうこうしているうちに、空豆さんがキレイになって帰ってきました。大家さんご夫婦にも安らかな顔を見てもらって、タクシーを呼びます。

担当の先生も見送りに出てきてくださって、大きな箱を積み込み、ありがとうございました、と家路につきます。

2022年9月5日、朝9時頃、空豆さん享年10歳8ヶ月。
10歳9ヶ月にちょっとだけ足りなかったな。

(続きます)

空豆さん闘病記(その6)
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コメント

  1. 鈴木 より:

    読んでいると涙が出てきます。
    小さな体で一生懸命頑張ったんですね。
    飼い主様も、言葉で言い表せないくらいいろんな思いがありますよね。

    こんなに大切にしてもらえて、幸せな一生だったと思います。

    • 管理人 より:

      >鈴木さん
      読んでいただいてありがとうございます。
      空豆さんけなげに頑張りました。同じように、いまこの瞬間も頑張っている子がいるんだなと思うと、応援したい気持ちと切ない気持ちと、おっしゃるとおりいろんな思いが湧き出してきます。